同じ日本の電気でも、東京と関西、九州と中国で卸電力価格が違うことがあります。その背景を理解するうえで欠かせないのが、地域の電力系統をつなぐ「地域間連系線」です。
連系線があれば、離れた地域の電源を使うことができます。ただし、送れる量には上限があります。この記事では、日本の連系線のつながりと容量の考え方を整理し、JEPXの市場分断やエリア価格との関係を解説します。
1. 地域間連系線とは?エリアを越えて電気を送る設備
地域間連系線とは、異なるエリアの電力系統をつなぐ送電線や連系設備です。一般には「連系線」と呼ばれますが、交流の送電線だけでなく、直流に変換して送電する設備や、周波数を変える設備も含めて考える必要があります。
役割は、あるエリアで発電した電気をほかのエリアに送ることです。平常時の経済的な電源利用に加え、需給が厳しいときの応援融通や、再エネの広域的な利用を支えます。
一方、エリア内の送電網にも制約があります。隣のエリアにつながる設備だけを強くしても、その前後の送電網が電気を運べなければ、十分には活用できません。
2. 日本の電力系統はどうつながっている?
北海道から九州までの9エリアは連系設備で結ばれています。沖縄は、この本土側の連系系統には接続されていません。北海道・東北・東京側は50Hz、中部以西は60Hzが基本で、東西間の融通には周波数変換が必要です。
OCCTO:全国系統の概念図・2026年度年間マージンをもとに、主要な接続関係を整理すると次のようになります。図は主要な接続関係を示し、設備の全名称・回線数を網羅するものではありません。

日本全体を、北から南へ一本の線だけでつながった構造と考えるのは正確ではありません。特に中部・北陸・関西など、複数の経路がある交流系統では、一つの取引による電力の流れが複数の経路に分かれます。
北海道―東北は双方が50Hzですが、直流設備で接続されています。直流連系は、周波数が違う地域をつなぐ場合だけに使われる方式ではありません。
3. 設備容量・運用容量・空容量は何が違う?
「この連系線は何万kW送れるか」を見るときは、どの容量を指しているかを確認する必要があります。設備の規模と、市場取引でその時点に利用できる量は同じではありません。

OCCTO:2026~2035年度の連系線の運用容量では、年間・長期の運用容量に加え、算出方法や設備停止時の容量が公表されています。日々の詳細は系統情報サービスで確認する案内となっています。
上限を決めるのは送電線の太さだけではありません。電流による発熱、電圧や同期の安定性、周波数維持などの観点から、安全に送れる量を評価します。設備の点検や故障、周辺系統の状態によっても変わります。
同じ連系線でも、AエリアからBエリアへ送る場合と、その逆では条件が違います。季節・時間帯・送電方向をそろえずに容量を比較すると、誤った理解につながります。
4. なぜ連系線の制約で市場分断が起こるのか
JEPXのスポット市場では、売りと買いの入札を組み合わせる際、エリアをまたいで送れる量も考慮します。安い売り入札がある地域から電気を送ることで、別の地域の高い電源の利用を減らせる場合があります。
しかし、その取引をすべて成立させようとすると連系線の制約を超える場合には、制約を満たすように約定を計算し直します。その結果、エリアごとの価格が分かれることがあります。これが市場分断です。
資源エネルギー庁:エネルギー白書2020・電力システム改革の推進でも、連系線の混雑を考慮した約定計算によってエリア価格に差が生じる仕組みが説明されています。
市場分断は、連系線が物理的に切れたり、送電がゼロになったりすることではありません。送電を続けながら、追加で送りたい量を通せずに価格差が残ることがあります。
価格そのものの定義は、エリアプライス・システムプライス・市場分断の記事を参照してください。ここでは、その背景にある送電の制約に注目します。
5. 具体例:安い電源があっても、すべては送れない
A・Bの二つのエリアだけを考えます。Aでは8円/kWhの電源に余力があり、Bには100MWの需要と15円/kWhの電源があるとします。損失は無視し、各電源の入札条件は一定とした説明用の仮定です。

後者でAの価格が8円/kWh、Bが15円/kWhになるなら、エリア間値差は7円/kWhです。60MWを送電していても、残る40MWをAから追加で送れないために差が残ります。実際の価格は、両エリアの売買入札全体と制約から決まります。
なお、MWは電力の大きさを表す単位です。60MWの送電を30分続けた場合の電力量は30MWhです。連系線の容量と、取引した電力量は区別して読む必要があります。
6. 連系線の利用と間接オークション
エリア間の取引では、「自社が先に送電枠を押さえれば、その枠を自由に使える」と考えるのは適切ではありません。日本では2018年10月1日受渡分から間接オークションが導入され、市場を介して連系線を利用する仕組みに移行しました。
JEPX:間接オークション実施に伴う取引所利用に関する説明では、エリア間の電力取引における取引所利用が説明されています。基本的には、市場の約定と一体で連系線の容量を割り当てる考え方です。
このため、他エリアから調達する契約では、エリア間値差を誰が負担するのかが重要になります。値差への備えに関連する仕組みは、間接送電権の記事で解説しています。間接送電権を持つことが、物理的な送電枠の優先利用を意味するわけではありません。
7. 増強すれば価格差や出力制御はなくなる?
連系線の増強は、安い電源や再エネをほかの地域へ送りやすくし、混雑の緩和に役立ちます。ただし、価格差や出力制御が必ずゼロになるわけではありません。
需要や発電量は変動し、エリア内の送電網にも制約があります。全国的に電気が余る時間帯には、送電先も受け入れにくくなります。連系線に加え、蓄電池、揚水、需要の調整、地内系統の整備などを組み合わせる必要があります。
増強計画は、OCCTO:広域系統長期方針・整備計画で確認できます。計画・工事中の設備と、すでに運用中の設備は区別して見ることが大切です。
再エネとの関係は、出力制御の記事も参照してください。
8. 実際の情報を見るときのチェックポイント
OCCTO:系統情報サービス等への入口から系統情報サービス等を開き、価格差が生じた時間と同じ受渡時間の情報を確認します。公表項目は、最新の画面説明や注記に沿って読みます。
- 場所と方向:どのエリア間で、どちら向きか。
- 時刻:同じ30分コマの価格と容量を比較。更新時点も確認。
- 設備の状態:点検・工事による容量低下がないか。
- データの意味:設備容量・運用容量・空容量を区別。潮流は計画か実績かを確認。
価格差と後から取得した空容量だけで、原因を断定しないことも重要です。情報の更新や複数の系統制約によって、単純に一対一で対応しない場合があります。
9. まとめ
地域間連系線は、各エリアの電源を広く利用するための設備です。しかし送れる量には制約があり、その制約が市場取引を制限すると、エリア価格に差が生じることがあります。
「つながっていること」と「必要なだけ送れること」は別です。日本の接続関係、容量の定義、受渡時間と送電方向を押さえると、市場分断を設備と価格の両面から理解しやすくなります。

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