FIT・FIP制度とは?仕組み・違い・再エネ賦課金を初心者向けに解説

太陽光発電や風力発電など、再生可能エネルギーの普及を支える「FIT制度」と「FIP制度」。

電力業界のニュースなどでよく登場する言葉ですが、「FITとFIPは何が違うの?」「発電した電気はどのような価格で売れるの?」「電気料金に含まれる再エネ賦課金とどう関係するの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

FIT制度は再生可能エネルギーの電気を一定の価格で買い取る仕組み、FIP制度は市場で売電した収入にプレミアム(補助額)を上乗せする仕組みです。

この記事では、FIT・FIP制度の基本的な仕組み、両制度の違い、売電収入の計算例、再エネ賦課金との関係まで、初心者にもわかりやすく解説します。

1. FIT制度とは?

FITとは「Feed-in Tariff」の略で、日本語では「固定価格買取制度」と呼ばれます。

再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定める価格で一定期間買い取ることを保証する制度です。

日本では2012年7月に本格的に導入されました。

対象となる再生可能エネルギーには、次の5種類があります。

  • 太陽光発電
  • 風力発電
  • 水力発電
  • 地熱発電
  • バイオマス発電

制度の対象となるには、設備や事業計画について国の認定を受けるなど、所定の要件を満たす必要があります。

FIT制度の仕組み

例えば、ある太陽光発電所の買取価格が15円/kWhに設定されているとします。

この発電所が1年間に100万kWhの電気を売電した場合、売電収入は次のようになります。

100万kWh × 15円/kWh = 1,500万円

つまり、年間1,500万円の売電収入を見込めます。

※価格と発電量は説明用の仮定です。

FIT制度の特徴は、買取期間中の単価が原則として固定されることです。

卸電力市場の価格が上昇しても下落しても、基本的に認定された買取価格に基づいて収入が決まります。

これにより、発電事業者は長期的な収入を予測しやすくなり、太陽光発電所などへの投資を進めやすくなります。

なお、買取期間や買取対象となる電力量は、電源の種類や設備規模、認定条件などによって異なります。

2. FIP制度とは?

FIPとは「Feed-in Premium」の略で、市場連動型の再生可能エネルギー支援制度です。

日本では2022年4月に導入されました。

FIT制度との最大の違いは、発電した電気を市場などで販売し、その売電収入にプレミアムが上乗せされることです。

FIT制度では、原則として決められた価格で電気を買い取ってもらいます。

一方、FIP制度では、発電事業者が卸電力市場や相対契約などを通じて電気を販売します。

そして、制度に基づいて算定されたプレミアムを受け取ります。

FIP制度の目的

FIP制度が導入された背景には、再生可能エネルギーを電力市場に統合していくという政策目的があります。

例えば、太陽光発電が大量に発電する晴天の昼間には、電気の供給が増えて市場価格が低下することがあります。

一方、夕方など電力需要が高まる時間帯には、市場価格が上昇する場合があります。

FIT制度では買取価格が固定されているため、市場価格が高い時間帯に発電量を増やす直接的なインセンティブは限定的です。

しかしFIP制度では、市場価格が高い時間帯に売電できれば、より多くの収入を得られる可能性があります。

そのため、蓄電池を活用して売電時間を調整するなど、電力需要に応じた発電・販売を促す効果が期待されています。

3. FIT制度とFIP制度の違い

両制度の違いを整理すると、次のようになります。

項目

FIT制度

FIP制度

正式名称

Feed-in Tariff

Feed-in Premium

日本での導入

2012年

2022年

売電の仕組み

固定価格での買取

市場取引・相対取引など

売電価格

原則固定

市場価格などに連動

支援の方法

固定価格による買取

プレミアムの交付

市場価格の影響

原則として小さい

直接影響する

主な政策目的

再エネ導入の促進

再エネの市場統合・自立化

最も重要なのは、発電事業者の収入が市場価格に連動するかどうかです。

FIT制度では、売電単価が原則固定されています。

一方、FIP制度では、市場価格が高い時間帯に電気を売ることで、収入を増やせる可能性があります。

ただし、その分、市場価格の変動リスクや需給管理の負担も発生します。

4. FIP制度のプレミアムはどう決まる?

FIP制度では、発電事業者が市場などで得る売電収入とは別に、プレミアムが交付されます。

基本的な考え方は次のとおりです。

プレミアム単価 = 基準価格 − 参照価格

  • 基準価格:再エネ発電事業の効率的な実施に必要な費用などを踏まえて設定される価格
  • 参照価格:市場取引などによって期待される収入をもとに算定される価格
  • プレミアム:基準価格と参照価格の差をもとに交付される支援額

実際の算定では、非化石価値相当額などの調整や、プレミアムが交付されない時間帯に関するルールもあります。

また、プレミアム単価は原則として月ごとに算定されます。

FIP制度の収入計算例

ある太陽光発電所について、次の条件を考えます。

  • 基準価格:15円/kWh
  • 参照価格:10円/kWh
  • 実際の売電価格:12円/kWh
  • 売電量:10万kWh

ここでは、制度の細かな補正を省略します。

プレミアム単価は、

15円/kWh − 10円/kWh = 5円/kWh

となります。

市場での売電収入は、

10万kWh × 12円/kWh = 120万円

プレミアム収入は、

10万kWh × 5円/kWh = 50万円

したがって、合計収入は、

120万円 + 50万円 = 170万円

となります。

この例では、実際の売電価格が参照価格より高いため、基準価格15円/kWhを上回る実質17円/kWhの収入を得ています。

反対に、実際の売電価格が参照価格より低ければ、収入が基準価格を下回ることもあります。

つまり、FIP制度は売電収入を常に一定にする制度ではありません。

市場価格に応じて売電方法を工夫することが重要になります。

5. FIP制度とJEPXの関係

FIP制度を理解するうえで重要なのが、JEPX(日本卸電力取引所)です。

JEPXは、日本で電気を売買するための卸電力取引所です。

例えば、太陽光発電所がFIP制度を利用する場合、発電した電気をJEPXの市場で販売することができます。

JEPXのスポット市場では、翌日に受け渡す電気について、30分単位で売買が行われます。

市場価格は、電気の需要と供給によって変動します。

そのため、FIP制度を利用する発電事業者にとっては、発電量の予測だけでなく、市場価格の見通しも重要になります。

ただし、FIP電源の販売先はJEPXだけではありません。小売電気事業者やアグリゲーターなどとの相対取引も可能です。

JEPXの仕組みについては、関連記事「JEPXとは?電力業界で働く人が知っておきたい仕組みと基礎知識」で詳しく解説しています。

6. FIP制度では発電量予測も重要になる

FIP制度では、発電事業者などが市場取引や需給管理に対応する必要があります。

例えば、太陽光発電所が翌日の発電量を1万kWhと予測して電気を販売したとします。

しかし、当日の天候が予測より悪く、実際の発電量が8,000kWhになった場合、計画と実績の間に差が生じます。

このような差は、インバランスと呼ばれます。

インバランスが発生すると、制度や契約に応じて精算費用が生じる可能性があります。

そのため、FIP制度では、発電量の予測精度を高めたり、アグリゲーターに需給管理を委託したりすることが重要になります。

アグリゲーターとは、複数の発電設備や蓄電池などをまとめて管理し、市場取引や需給調整を行う事業者です。

こうした事業者を活用することで、再エネ発電事業者が市場取引に対応しやすくなります。

また、FIP制度には、発電量予測や需給管理に必要な費用を考慮した支援も設けられています。

7. 再エネ賦課金とは?

FIT・FIP制度を支える重要な仕組みが「再エネ賦課金」です。

正式名称は「再生可能エネルギー発電促進賦課金」といいます。

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及を支えるため、原則として電気を利用する人が電気料金とあわせて負担する費用です。

FIT制度による買取支援やFIP制度によるプレミアム交付などの費用は、この仕組みを通じて支えられています。

再エネ賦課金の計算方法

再エネ賦課金は、基本的に次の式で計算できます。

再エネ賦課金 = 電気使用量 × 再エネ賦課金単価

例えば、家庭で1か月に400kWhの電気を使用した場合を考えます。

2026年度の再エネ賦課金単価は、4.18円/kWhです。

したがって、

400kWh × 4.18円/kWh = 1,672円

となります。

つまり、この家庭では1か月あたり1,672円を再エネ賦課金として負担する計算です。

2026年度の単価は、2026年5月検針分から2027年4月検針分まで適用されます。

電気使用量別の負担額

月間電気使用量

月額賦課金

200kWh

836円

300kWh

1,254円

400kWh

1,672円

500kWh

2,090円

600kWh

2,508円

※2026年度の賦課金単価4.18円/kWhによる単純計算です。

電気使用量が多い家庭や企業ほど、再エネ賦課金の負担額も大きくなります。

なお、一定の要件を満たす電力多消費事業者には、賦課金の減免制度があります。

8. なぜ再エネ賦課金が必要なのか?

再生可能エネルギーは、燃料を使わずに発電できるというメリットがあります。

一方、発電設備の建設費や維持管理費などが必要です。

特に、普及の初期段階では、設備コストが高く、民間企業が投資しにくいという課題がありました。

そこで、FIT制度によって一定期間の売電収入を見通せるようにし、再生可能エネルギーへの投資を促してきました。

FIP制度も、電力市場への統合を進めながら、投資に必要な支援を行う仕組みです。

こうした支援費用を広く電気利用者で負担するのが、再エネ賦課金です。

ただし、再エネの導入拡大に伴って費用負担が増えることも課題となっています。

そのため、再生可能エネルギーの普及を進めるだけでなく、発電コストの低減や市場での自立化を促すことも重要になっています。

9. FIT・FIP制度と非化石証書の関係

FIT・FIP制度と関連する制度として、「非化石証書」があります。

非化石証書とは、非化石電源で発電された電気が持つ環境価値などを証書として取引できるようにしたものです。

ここで重要なのは、電気そのものの価値と、環境価値は別のものとして扱えるという点です。

例えば、太陽光発電所で発電した電気には、電力量としての価値だけでなく、再生可能エネルギー由来であるという環境価値があります。

FIT制度では、FIT電気に由来する環境価値は、所定の仕組みを通じて非化石証書として取引されます。

一方、FIP制度では、発電事業者が電気の販売とあわせて非化石価値を活用できる仕組みになっています。

そのため、FIP電源では、電力市場での売電収入やプレミアムに加えて、非化石価値の取引による収入も重要になる場合があります。

ただし、プレミアムの算定では非化石価値相当額が考慮されるため、環境価値による収入が単純にすべて上乗せされると考えるのは適切ではありません。

また、FIT・FIP制度は再エネ発電への支援制度であり、非化石証書は環境価値を取引する仕組みです。目的が異なることを押さえておきましょう。

10. 2026年度のFIT・FIP制度の動向

FIT・FIP制度では、毎年度、対象となる電源や設備区分ごとの買取価格・基準価格などが設定されます。

2026年3月19日には、経済産業省が2026年度以降の買取価格等を公表しました。

価格は電源の種類や設備規模、設置形態、認定年度などによって異なります。

例えば、太陽光発電でも住宅用と事業用、屋根設置と地上設置では、適用される価格や条件が異なります。

また、一部の設備では入札によって価格が決まります。

そのため、「2026年度の太陽光発電の買取価格は一律いくら」と考えるのは正確ではありません。

具体的な投資判断を行う際には、対象設備の区分に対応する最新の買取価格・基準価格と、調達期間・交付期間を確認することが重要です。

11. まとめ:FITからFIPへ、再エネの市場統合が進んでいる

FIT・FIP制度は、どちらも再生可能エネルギーの普及を支えるための仕組みです。

今回のポイントを整理すると、次のとおりです。

  • FIT制度は、再エネ電気を一定価格で買い取る制度
  • FIP制度は、市場での売電収入にプレミアムを上乗せする制度
  • FITは2012年、FIPは2022年に導入された
  • FIPでは市場価格の変動や発電量予測への対応が重要になる
  • 再エネ賦課金は、FIT・FIP制度などの支援費用を支える仕組み
  • 2026年度の再エネ賦課金単価は4.18円/kWh
  • 非化石証書は、FIT・FIP制度とは異なり、電気の環境価値を取引する仕組み

FIT制度は、再生可能エネルギーの導入拡大を支えてきました。

そしてFIP制度は、再生可能エネルギーが電力市場の価格シグナルに応じて発電・販売を行い、将来的に自立していくための重要な仕組みです。

両制度の違いを理解することで、日本の再生可能エネルギー政策だけでなく、電力市場の仕組みもより深く理解できるでしょう。


参考資料

本記事は2026年10月24日時点の公表情報をもとに作成しています。制度の詳細や適用価格は認定年度・設備区分などによって異なります。

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